今週からは、LPWAのさまざまな規格について紹介していきたい。LPWA、あるいはLPWANと呼ばれる規格は、Low Power Wide Area(もしくはLow Power Wide Area Network)の略だ。
 この規格、2016年ごろから、まず海外で次第に普及が始まり、2017年あたりから、日本でも取り組むベンダーやメーカーが増えてきた。2018年には一斉に開花……とまでは行かないものの、現実に商用サービスはすでに始まっている状況である。 「IoT時代の無線通信技術『LPWA』とは?」記事一覧省電力で広範囲であればLPWA、新規格も次々登場、LTEやWi-SUNの一部も?世界各地で広範に利用できるLPWAの老舗「SIGFOX」おおむね10kmをカバーする「LoRa」、51カ国で100事業者が提供M2M向け規格「LTE Cat.1」、最大10MbpsでLTE同様のカバレージのハイエンドLPWA?MCT向け省電力規格「LTE Cat.M1」、国内提供は要免許で携帯電話キャリアが中心に単三2本で約10年稼働の省電力規格、“NB-IoT”こと「LTE Cat.NB1」2Gしか通信インフラのない地域向けのLPWA「EC-GSM-IoT」1km超で通信可能な「Wi-Fi HaLow」こと「IEEE 802.11ah」日本発の規格「Wi-SUN」、スマートメーター向けに展開メッシュ対応で最大300kbpsの「Wi-SUN HAN」広範囲カバー時のコストパフォーマンスに優れる「RPMA」通信の冗長性を確保するLPWAらしからぬ通信技術「FlexNet」20万台ものデバイスが対応、3ホップメッシュが可能な「WirelessHART」柔軟さと相互接続性を確保した工場向け通信規格「ISA100.11a」バッテリーレスで動作する“超”低消費電力の「EnOcean」周波数利用効率が高く、微弱な信号で通信可能な「Weightless-P」4ホップまでのメッシュをサポート、今後の立ち上げを狙う「ZETA」ソニー開発の「ELTRES」、274kmの到達距離、時速40kmでも通信可能メッシュ前提の転送方式「CTF」を採用した「UNISONet」最大150kbps、単三で電池寿命20年のIoTアプリ向け「Milli 5」433MHz帯の利用で到達距離と低消費電力を両立した「DASH7」IoTはレッドオーシャン? LPWAはコストと期間での評価へUNISONet 7つの特徴、今後と海外への展開は?~ソナスインタビュー前編LoRaやNB-IoTでカバーできないニッチメジャーを目指す ~ソナスインタビュー後編#series-contents .current-page { font-weight: bold; }
省電力かつ広い範囲の通信規格でありさえすれば「LPWA」
 このLPWAとは何かと言うと、その言葉の通り、省電力かつ広い範囲(屋外と規定するのは、後述する理由で難しい)で利用可能な通信規格の全体を指し示す、比較的“緩い言葉”である。LPWAという用語自体が定義されていない(というか、そんなことをする団体も人もいない)ので、具体的に「ここからここまでがLPWAで、こちらはLPWAではない」といった線引きは現実問題として難しい。
 それもあって、「これ本当にLPWA?」と思うような規格でも、その仕様に携わる当事者が「これもLPWAの1つだ」と言い張れば、「まぁそう言ってるんだし、LPWAかもね」みたいに認知されてしまうという、実に緩いものである。そんなわけで、この連載で取り上げる中には、厳密には「LPWA?」と思うようなものも含まれることになるだろう。
LTEはLPWAに含まれる? 省電力の指し示す範囲は?
 具体的に難しいのは、まず「省電力」である。どのあたりまでがLPWAの範囲に含まれるのか、という規定がそもそもない上に、その範囲に含まれるかどうか線引きが難しい規格も存在する。そのいい例がLTEだ。
 LTEは、本来携帯電話向けの規格なので、LPWAには含まれないとしても、大多数の人間の賛同は得られるだろう。ただ、賛同する人は頭の中で、3.5G/4G(LTE)/4.5G(LTE-Advanced)/5Gといった標準を想定しているはずだ。ところが、LTE規格の中には、NB-IoT(LTE Cat NB1)/LTE Cat M1/LTE Cat 0/LTE Cat 1といったものも含まれている。NB-IoTが完全にLPWAの扱いである一方、Cat M1/Cat 0/Cat 1については、その線引きが非常に難しい。
 これらの規格の違いについては、制定年度が異なるという話をおいておけば、通信速度や利用する周波数スペクトル、消費電力となる。当然だが通信速度と消費電力は相関関係にあり、どのくらいの通信速度と消費電力までがLPWAの範疇かとすると、そこに明確な定義はない。このためにCat M1/Cat 0/Cat 1の線引きが非常に難しくなるとともに、その規格がLPWAかどうかも、言ったもの勝ちの状況と言えるわけだ。
LPWAにおけるWANの範疇は?
 もう1つ、WANの面も、実は定義として難しかったりする。本来のWAN(Wide Area Network)は、非常に広帯域な、市街地を超えた領域から県内・国内・海外を含む全世界までが範疇となる。
 WANの領域の手前とされる市街地については、最近は滅多に使わなくなっているが「MAN(Metropolitan Area Network)」と言う用語がある。市街地内はこの範疇で、おおむね建物内(この話も難しく、例えばキャンパスが247ヘクタールもある九州大学のような場合に、どこまでが「建物内」なのかという議論は当然ある)がLANの範疇とされてきた。
 これに対し、LPWAにおけるWANの範疇は、実際にはLANとMANの境界に近いあたりを想定しているものが多い。これにも例外はあり、SIGFOXのようにモナコから地中海(の一部であるリグリア海)を挟んで、180km先のコルス島の信号を受信したという以下のようなレポートもある。こうなると、明らかにMANの範疇を超えているわけだ。

投稿者 Akibano

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